日常で見かけるバイオフィルムは、掃除をさぼっているところにできた風呂場のタイルのヌルヌルや水を換えていない花瓶内部など、ありとあらゆるところに見られ、細菌が菌体外多糖という物を作って蓄積した非常に取りにくい細菌の固まりです。
口腔内におけるバイオフィルムは、歯の表面に溜まるプラークのことです。バイオフィルムは隙間が狭いため、消毒剤や抗菌剤、または、唾液の抗菌物質や白血球等が内部に入っていけず、なかなか簡単には除去できないのです。このプラークが固まったものが歯石です。バイオフィルムや歯石は、細菌にとって非常に生息しやすい温床や培地になるのです。
普段の歯磨きでは、プラークコントロールが充分でない部分が必ずあります。それを取り除くのが、私達(歯科医師・歯科衛生士)の行っているPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)です。歯周病はバイオフィルム感染症ですが、日々のプラークコントロールとPMTCによりコントロールすることができます。痛みもないのに通院するのは、面倒かもしれませんが、定期的にPMTCに受けることにより、生涯自分の歯で噛むことが可能になります。PMTCを定期的に受けることは、美容院に通うことと同じような感覚になってもらえるといいと思います。
1.磨いた後のきれいな歯の表面をペリクルが覆います
(ペリクルは歯を保護する唾液の成分)
2.ペリクルの上に善玉菌群が定着し、健全なプラークここで歯磨きすると健全なサイクル(新しいプラーク)が形成されます
3.善玉菌群の上に歯周病菌などの悪玉菌群が積み重なります (古いプラーク)
4.悪玉菌群がどんどん積み重なり、ネバネバをだし強固に引っ付くことでバイオフィルムに発達していきます。バイオフィルムから毒素・酵素が放出されます。
5.バイオフィルムを放置していると・・・
唾液中のカルシウムが沈着し、石灰化して歯石になり歯ブラシで全くとれなくなってしまうのです 「プラーク」も「バイオフィルム」も「歯石」もいずれも同じものからできており、成熟段階によって名前が違っているだけなのです。
私たちの口の中には200~300種類もの細菌が存在しています。
その細菌の中には、体に影響を与えない善玉菌と悪影響を及ぼす悪玉菌がいます。この悪玉菌の中に、むし歯菌や歯周病菌が存在するのです。
この中の悪玉菌が食べ物の中の糖質を栄養として増殖し、ネバネバをつくり集合したものが歯周病やむし歯の原因である口腔バイオフィルム(古いプラーク)なのです。
このバイオフィルム(古いプラーク)を除去すること、できないようにすることが大切であり、これをプラークコントロールといいます。
プラークコントロールこそが、歯周病の治療、予防の基本でもあります。
バイオフィルムが医療上問題となる重要な特徴として、抗菌剤に極度に抵抗性を示すこと、免疫防御メカニズムに抵抗性があることが挙げられます。これらの特徴は、次のような問題を引き起こします。
バイオフィルムはどういう問題を引き起こすのでしょうか。
バイオフィルムは自然界でさまざまな問題を引き起こしますが、特に医療上の問題点として次のようなことが挙げられます。
例えるなら、バイオフィルムはカビの生えた生ゴミの山で、上からどれだけ殺菌剤をかけても底にはなかなか届きません。抗生物質と消毒のような従来の方式ではあまり効果がないのです。
もし 抗菌剤のみで除去するなら、とてつもない量が必要です。
人体で服用するなら、人も細菌も死んでしまうでしょう。環境に与える影響も甚大です。それらを考えると非実用的です。